Web magazine - Interview

OHTER CAGORY
Column Archives
Erection-10th Anniversary-
Bose (スチャダラパー) x 安部勇磨 (never young beach) x メイリン (ZOMBIE-CHANG) 特別座談会
角張渉(カクバリズム) × 増田 "takeyan" 岳哉 (SUMMIT)
INTERVIEW




Erection-10th Anniversary-
Bose (スチャダラパー) x 安部勇磨 (never young beach) x
メイリン (ZOMBIE-CHANG) 特別座談会

TEXT : 髙橋 圭太
PHOTO : 寺沢 美遊

 2014年7月、異色の三つ巴戦としてマッチメイクされたcero、SIMI LAB、PUNPEEの代官山UNIT対バン企画。これまで幾多の熱狂を演出したパーティー〈Erection〉の10年間でも屈指の好ゲーム、記憶に残っている諸氏も多いのではないでしょうか。そして2017年6月。未曾有の3ウェイショーケースが装いも新たに帰ってきました。今回、名乗りを上げたのはスチャダラパー、never young beach、ZOMBIE-CHANGというジャンルや出自、世代も違う3組。はたしてこの3組がステージ上でどんなケミストリーを果たすのでしょう。

本稿はそんなスペシャルなイベントの開催を記念して執り行われた特別座談会。スチャダラパーからBose氏、never young beachからボーカルとギターを担当する安部勇磨氏、ZOMBIE-CHANGことメイリン女史が列席し、さながら世界マッチ前の調印式の緊張感……は微塵も感じられず、和気あいあいと鼎談は進みました。座談会当日はキーワードが書かれたカードを引きながら、そのお題に沿ってざっくばらんに歓談。あんなことからこんなことまで、多岐に渡る15000字超えのトークをお楽しみください。







−さて、本日はお集まりいただき、ありがとうございます。なにせ、出自も年代も違う3名なので、どんな話をしようかなと思っているんですが。

Bose ふたりはいくつなんだっけ?

メイリン わたしは22歳です。

安部 自分は今年27歳になります。

−今回の鼎談ではひとつのテーマを掘り下げるというよりは、ざっくばらんにいろいろな話ができればと思っておりまして。

Bose だれかの悪口とかだ?

—ハハハハハ! 悪口もいいんですが、今日はテーマが書かれたカードを引いてもらい、そのお題で話していただこうかなと。みなさん、よろしくお願いします。では、さっそくはじめましょう!

ライブ

−はい、1枚目のカードに書かれたお題は“ライブ”です。

Bose ネバヤンは以前に大阪でライブを観る機会があったんだけど、メイリンさんはまだ観たことないんだよね。いつもはどんな感じでやってるの?

メイリン 普段ライブやるときは、ひとりでシンセとサンプラー、あとバックトラックを流す用のCDJを使いながら歌う、という感じです。でも、今度の対バンでははじめてバンド・セットに挑戦するんです。

Bose へー! メンバーは?

メイリン ネバヤンのドラム(鈴木健人)と、D.A.N.のベース(市川仁也)にお願いしてて。

Bose いいとこ連れてきたね! 絶対よさそう。

—ボーズさん、ネバヤンのライブを観られていかがでした?

Bose すごい意外だったんだよね。もっと醒めてて、クールなバンドのイメージだったんですよ。PVとかジャケットもそんな感じだったし。それがライブ観たら“イエーイ!”みたいな、全然ダサい感じで。それでめちゃくちゃ好感持ったなぁ。

安部 ハハハ! おっしゃる通りです。バンドをはじめて1年くらいはカッコつけてたんですよ。でもそれって怖がってるだけで、ちゃんとお客さんと向き合ってなかったっていうか。それでツンツンしてたんですけど、最近は素の状態で接せれるようになったような気がしますね。

-勇磨さんがはじめてスチャダラパーのライブ観たのは?

安部 福岡のイベントでいっしょになったときに観たのが最初だったような。“今夜はブギー・バック”とかガンガンやってて感動したんですよ。ずっと活躍されてる方って、一周まわって昔の曲はやらない感じなのかなって勝手に思ってたんで……。

Bose その時期、とっくに超えたね!

一同 ハハハハハハハ!

安部 なんか、それを観てライブってやっぱ人柄が出るなぁって思ったりして。

Bose そういうのって30歳ごろとかになるんじゃない? “昔の曲はやりませんけど?”みたいなさ。だからネバヤンも3年後くらいにインストしかやりたくない時期みたいなのが出てくるかもよ。

−メイリンさんはスチャダラパーに対してどういうイメージ持ってますか?

メイリン みなさん自然体で楽しんでやってるってイメージがあります。

Bose でも22歳でしょ? いよいよ、ぼくがポンキッキーズに出てたの知らない世代かもね。

メイリン いや、ポンキッキーズの記憶はあるんですよ! でも幼少期の記憶って感じで……。

Bose たぶんね、19年前くらいだから、3歳とかだ……。勇磨くんとかが小学生くらいでしょ、当時。

安部 そうですね。っていうか、さっきボーズさんのことを画像検索してたんですけど、すっげーイケメンですよね?

Bose ハハハハ! なにそれ!

安部 いや、それこそポンキッキーズとか思い出したくて、取材前に画像検索してたんですよ。そしたら、ボーズさんめちゃめちゃカッコよくて!

Bose ハハハ! やめろ! 画像検索やめろ!

安部 いや、でもほんとカッコよくて。ファッションとかも含め、カッコいいなぁって。

Bose ファッションなんて昔から全然変わってないよ?

安部 それがいいんですよ! それになんか透明感もあって……。

一同 ハハハハハハハハ!

あこがれ

−次のカード引きますね。次は“あこがれ”。

Bose いまの形になったのは、だれかにあこがれて、とかあったの?

メイリン わたし、1994年生まれなんですけど、たぶんインターネットが幼いころから普及してる世代だと思うんですよ。そもそも音楽はじめたころは弾き語りだったんですけど、途中からひとりで弾き語りってなんか幅が狭くなっちゃうなぁと思って。そこから、パソコンに最初から入ってた音楽ソフト使ってみて、という感じでいまのスタイルになったんです。

Bose ちなみに最初に使ったソフトって?

メイリン ガレージバンドですかね。最初はギターの弾き語りに合わせてドラムの音を入れる程度だったんですけど、真逆のことをやんないとおもしろいものは生まれないんじゃないかと突然思ったんですよね。そこからガレバンだけじゃ物足りなくなってきて、ロジック使いだしたり。

Bose そのときはどんな音楽を聴いてたの?

メイリン そのときはラモーンズばっかりです。

Bose えー! すごいね、その突然変異感。でもたしかにラモーンズっぽさはわかる。

−アーティスト名が英語表記になる前の作品はだいぶフォーキーですもんね。

メイリン あぁ、それ黒歴史のやつです、はい。

一同 ハハハハハハ!

メイリン 思春期にやったことなんで……。

Bose まだ思春期からそんなに経ってないでしょ!

メイリン へへへへ、そうなんですけどね……基本的にはそのころの話はNGですねぇ。

Bose でも、そりゃそうですよ。前に作ったものがカッコ悪いなって思うから、がんばって新しいのを作れるんだから。そして、作っている時にはあとから聴いてカッコ悪いかなぁとか考えすぎないことも才能なんだよね。やめない、懲りない、気がつかないっていうね。

−勇磨さんはどうですか?

安部 カッコいいひとみんなにあこがれてますけど、音楽はじめたきっかけでいうとハイロウズとかミッシェルガン・エレファントとかですね。兄がふたりいるんですけど、その影響もかなりあったと思います。それでリバティーンズとかストロークスとか聴くんだけど、そういうひとたちを真似てスキニージーンズとか穿いても全然似合わないんですよ。

−ハハハハ!

安部 “音楽って外見じゃねえよ”って言うひとたくさんいるから鵜呑みにしてたんですけど、やっぱ外見って関係あるよなぁって。

Bose そうそう。ミッシェルとか会ったら全員背高くて細いもんね。

安部 ハハハ! ほんとそうなんですよ。だから自分のやり方で無理せずやるっていうか。

メイリン たしかに。

−ボーズさんはあこがれのひと、いますか?

Bose ぼくらはやっぱりみうらじゅんさんとかかな。型にはまらないカッコいいひとがたくさんいたので。いとうせいこうさんもそうだね。いまみたいに“サブカル”って言葉がないころから、ジャンル関係なく活躍してきたひとたち。“このひと、職業なに?”っていう感じで、カッコよくてヘンなことやってるっていう。それをラップでやりたいっておもっただけ、みたいな。

−でも、スチャダラパーはもはやあこがれられる側の立場ですよ。

Bose いやいや、ほんと逆ですよ。若いひとみんなカッコいいし。ネバヤンに入れてくんないかな?

安部 え! ほんとですか? 本気にしますよ!

Bose だって、ぼくらなんてもういい歳なんだから! 若いひとたちにがんばってもらって、若いひとたちにフックアップしてもらいたいよ!

一同 ハハハハ!

Bose でもサチモスから先にオファーあったらそっちに入るけど(笑)。

安部 ハハハハ!


ZOMBIE-CHANG「I CAN’T GET TO SLEEP」

料理

−では次のカード引きましょうか。次は……“料理”!

メイリン わたしは料理、得意だと思います!

Bose お、自画自賛。得意料理とかは?

メイリン うーん……ラザニアです!

Bose おぉ、なんかすごいね。だって、けっこう手間かかるでしょ? ぼくもけっこう料理するんですよ。でもラザニアは三度手間くらいかかるから、なかなか作らないなぁ。

メイリン もうね、前日から挽肉とホワイトソース仕込んでおくんですよ。で、次の日に焼くっていう。

安部 ボーズさんはどんな料理するんですか?

Bose 冷蔵庫にあるものでチャッチャッとね。それでこどもと奥さんのお腹を満たすっていう。

メイリン かっこいいですねぇ。家ではボーズさんが料理するって感じですか?

Bose 7割強は作ってますねぇ。片付けとかも楽なものとかってなると、パスタとかが多くなっちゃうんだけど。

メイリン いい旦那様ですね!

Bose でも、しょうがないよねぇ。どっちが料理やるかっていう夫婦間の戦いで敗れただけですよ。

−攻防戦があるんですね。

Bose というか、ぼくがやるまで奥さんが寝てたりするからね。作り出したら起きてくる。これ、ぼくの負けですよ。勇磨くんは料理するの?

安部 洗い物とかがイヤなんですよねぇ。だからバナナと苺を食べたり、鶏肉を茹でたり……。

メイリン 料理じゃないじゃん!

Bose でもわかる。自分もそれくらいの年齢は家で料理なんかしなかったもん。だいたい外食とかコンビニとか。

安部 そうなんですよねぇ。だから最近はうちらも偉くなったもんで、ライブのときにケータリング出してもらったりして。そこでバカみたいに食って、家ではバナナみたいな、そんな感じです。

Bose じゃあ家の冷蔵庫とかガラガラな感じだ。

安部 そうですね。冷蔵庫の下のあたりに汚れがたまってくのとか耐えられないタイプなんですよ。だから基本的に冷蔵庫はガラガラ。キレイ好きなんですよ、自分。毎日掃除機かけるし。

Bose え! なんか歌のイメージと違う! ダラダラ万年床で生活してるダメな若者って感じの世界観かと思ったのに。

安部 フフフ。布団も毎日干しますしね。これでまんまそんな感じだったら、ほんとに汚いあんちゃんみたいじゃないですか。それはイヤだなぁって。もうさすがに27歳なんで……。

Bose いいですねぇ。好感持てますね。

安部 奥さんって片付けとか掃除とかされるんですか?

Bose 奥さんはだいたい椅子とかに服が重ねてかけてあるタイプのひと。

メイリン わたし、奥さんとおなじタイプです。

安部 それ、許せなくないですか?

Bose でも、椅子にかける派のひとにも言い分があるんだよね? 床に置いたら汚れるし、明日着るから出しといてるのかもしれないし。

ZOMBIE そう! 明日着るように出してあるんです!

安部 だったら明日出せよっていう!

Bose ハハハ! まあまあ。

−ちなみに、椅子にかかった奥さんの服はボーズさんが片づけるんですか?

Bose 片づけますね。そのためにハンガーたくさん買ってきたり。それでケンカするんだったら、こっちで買ってきたほうが話が早いじゃん。先回り、先回りですよ。

安部 勉強になります!

インターネット

−勉強になる話が聞けたところで次のカードいきましょう。次が……“インターネット”。さきほどメイリンさんがインターネット・ネイティブだって話はしましたが。

メイリン 小学校のころにパソコンの授業とかありましたしね。

Bose それさぁ、親の立場からすると怖い部分もあって。親としては見せたくない情報も入ってきちゃうわけじゃん、残酷な画像とかさ。やっぱりこどもの立場からしても、そういうのはつい見ちゃうもの?

メイリン だと思いますね。やっぱり刺激の強いものを見たがっちゃうんじゃないですかね。

安部 自分は学生時代とかガラケーだったし、家にパソコンがなかったので、同世代と比べるとちょっと出遅れてるんじゃないかな。2ちゃんとか見たのも最近ですよ。いまのバンドはじめたころくらい。

Bose おっそ! いまの2ちゃんとか必要ないでしょ。たぶん書き込んでるの8人くらいだよ!

一同 ハハハハハハハ!

−でも、逆にそういう免疫ないと、ネットで批判とかされたらけっこうショック受けるんじゃ?

安部 そうなんすかね? メンバーとかマネージャーもたまに見てるし、自分もたまに見て食らうけど、まぁネタにする感じっていうか、そういうのを笑いにできるメンタリティは常に持っておきたいなっていう。

−ボーズさんは最近インターネットは?

Bose 全然、ずーっと、最後まで。寝落ちするまでネット。最悪のパターン。最近だとネットフリックスとかかな。ややこしいドキュメンタリーとかをこどもが寝たあとに、とか。

-メイリンさんは?

メイリン わたしはもう生まれたころからインターネットあったし、もともと2ちゃんとかも見てたタイプなんですけど、いまはそんなに。ツイッターでもひとりしかフォローしてないし、情報を遮断するようにしてるかもしれないですね。無駄な文字情報とかはけっこうシャットダウンしてます。そもそも、親もけっこう厳しくて。ケータイでネットばかり見てると取り上げられたりしましたし。

—なるほど。ボーズさんは親の立場として、これからこどものケータイを取り上げなきゃいけない立場になるかもしれませんが。

Bose それねぇ。でも、自分がいまの若い子の立場だったらずっと見てたはずだからねぇ。ゲーム実況なんて一生見てられるじゃん。だからむずかしいよね。外でさ、ベビーカー乗ってるこどもがずっとiPhone見てて、みたいなことってあるでしょ? あれとかも“ひでぇなぁ”とか思うんだけど、育てる側からしたら、四六時中こどもを見続けなきゃいけないのはしんどいじゃん。とりあえずiPhone渡しておけば、そのあいだは休めるって思うと、親の気持ちもわからなくない。自分たちがこどもだったころはそれがテレビだったんですよ。親が家事をやってるあいだはテレビ見てたもんね。そう思うといっしょはいっしょだから、なんとも言えない。もし制限するとしたら提供する側がある程度やらなきゃいけないことだよね。検索の1ページ目からヤバい情報が出てこないようにするとか。見る側も提供する側も、文化の成熟を待たなきゃいけないかなって思うな。

never young beach - 明るい未来(official video)

メンバー

-では次の話題に移りましょう。次は……“メンバー”。ネバヤンはメンバー間みんな仲いいですか?

安部 めちゃめちゃ仲いいっすね。隠しごととかほんとにイヤなんで、メンバーには一切包み隠さずしゃべるようにしてます。そういうごゴニョゴニョした状態のバンドで歌いたくないんですよね。

Bose おお、男らしいね。

安部 陰湿なやつのグルーヴで歌いたくないですよ。

一同 ハハハハハハハハハハ!

−それは素晴らしいですねぇ。その感じが音楽性にもしっかり出てると思います。

安部 けっこうそれは重視してて。だって、やましいこととかあっても、それを笑い飛ばせなかったら、ただのナヨナヨした気持ち悪いバンドになっちゃうじゃないですか。SNSの使い方ひとつ取っても“そんなしょうもないこと書いてんじゃねよ!”って怒りますし。

Bose それ、すごいね! メンバーはみんな同い歳?

安部 いや、同い歳がもうひとりと、一個下がふたり、二個下がひとりです。

Bose じゃあ勇磨くんがいちばん歳上なんだね。学校の先輩、後輩みたいな感じか。

安部 あんまり年齢関係なくやってますけどね。ネタで“いちばん歳下なのに調子乗ってんじゃねーよ”とか軽口言うことはありますけど。

−風通しがいいですねぇ。スチャはそういう部分どうですか?

Bose うちらはねぇ、わりとゴニョゴニョしてますよ。フフフ。そんなに明るいタイプでもないしね、3人とも。ただ、ひとの悪口言うときだけ結束する。とにかく売れてるやつらへのやっかみがヒドいね!

−ハハハハ! プライベートには踏み入らない、とか暗黙のルールみたいなのはあります?

Bose 特にないかなぁ。ほかふたりは兄弟だからね。そこらへんがちょっと特殊なんだけど。だから、ぼくはあの兄弟にちょっと入れてもらってる感じっていうか。もともと当初はあの兄弟の川崎の実家で曲を制作してたからね。両親が仕事で出払ってるときに作ったりしてて、そのまま泊まって、朝ごはんはあそこの家族に混ざって食べてる、っていう謎の状況。それで“今夜はブギー・バック”くらいまでやってた。

メイリン へぇー。わたしはひとといっしょにやったことないからあこがれますねぇ。たまに遠征してもひとりだし、地方でごはん食べるときもひとりなんですよ。お散歩するくらいしかやることなくて。

Bose 芸人さんとかでもさ、二人組のひとたちってちゃんとしてるんだよね。ピン芸人は頭おかしいひとが多いっていう。

安部 ハハハ! 協調性がない。

メイリン かもしれないですねぇ。でも結局ひとりで作ったほうが楽だし楽しい気がしちゃって。

−勇磨さんはひとりでやってみたいという気持ちはあったりするんですか?

安部 あぁ、考えますよ。バンドとかいつまで続けられるかわからないし。バンドって若いからできるようなとこあるし“コイツとは生涯いっしょにいるってことはないだろうな”ってうっすら感じながら……

Bose ハハハハハハハ! やめろやめろ! まだこれからなんだから!

安部 でも自分もこれからもっといい歌を歌えるようになりたいし、メンバーも各々技術を高めていけたらいいし、バンドはそのための踏み台っていうか、言い方悪いですけど。もちろん、そのうえでみんないっしょにやれるんだったらそれがいちばんいいかなって思いますね。

−そもそも作曲に関しては勇磨さんがイニシアティブを?

安部 そうですね。最初にぼくがざっくりとしたメロディーとベースラインを作って、って感じ。

Bose そう考えるとソロ活動とかも先々できるといいよねぇ。

−ボーズさんはソロでやりたいという気持ちは?

Bose ない。全然ない。ソロになってまでラップやりたいと思わないね。もうめんどくさい。そうならないために3人でやってるんだから、力を分散させて。

一同 ハハハハハハ!

—ちなみに、これまでで深刻なケンカとかはなかったですか?

Bose そんなにないけど、あるとしたら兄弟間で、というのはあるかも。兄弟だから変なとこで厳しいの、ジャッジが。昔、まだシンコとアニがいっしょに住んでる部屋で作業やってて、ああでもない、こうでもないって感じになって。でも制作のダメ出しがだんだん“おまえ、全然洗濯しないよな!”とか話が逸れていって。まったく関係ねえっての!

−ハハハ! ネバヤンはメンバー間でケンカって?

安部 よくありますよ。うちのギターでまっちゃん(松島皓)ってやつが平気でウソつくんですよ。けっこう簡単にウソつくんです。最近のレコーディングでも、エフェクターを一式持ってこなくて直アン(ギターをアンプにダイレクトにつなぐこと)でやってるんですよ、まっちゃんが。おめえ、いつからそんなカッコいいスタイルなったんだよって。

一同 ハハハハハハハハハ!

安部 そしたら“エフェクター全部調整に出してて”って言うから、そういうこともあるかってその場では納得したんです。そんで後日、機材置いてあるスタジオに行ったら、調整に出してるはずのまっちゃんのエフェクター・ボードがあって。不思議に思ったからスタッフさんに“まっちゃんってこのエフェクター取りに来ました?”って聞いたら“取りに来てないよ”って言うんです。で、まっちゃんに電話して“エフェクター取りに来てないってことは調整出してないってことだよね? ウソついたでしょ”って言ったら逆ギレされて。

一同 ハハハハハ!

安部 で、まっちゃんも“調整出したときの領収書持ってくわ”って言うから、どこの楽器屋に調整出したか聞いたんです。で、その場で楽器屋に電話して問い合わせたら、調整出してなかったみたいで。まっちゃんに楽器屋に出した日付も聞いたんですけど、その日あいつ一日中古着屋いて、古着屋のインスタグラムのアカウントで“ネバヤンの松島さんが一日中いました”って投稿があって。

一同 ハハハハハハハハ!

安部 そういう証拠を全部揃えてまっちゃんに電話して“ウソついたべ?”って聞いたら、“ごめん、ウソついてた”って。

Bose ハハハハハ! 自供! いやぁ、まっちゃんおもしろいなぁ。前にネバヤンといっしょだったときの打ち上げでまっちゃんと話したんだよね。今回のライブも決まってたから“今度の対バン、なんかいっしょに曲とかできたらいいよねぇ。”って言ったら、まっちゃんが“やりたくないんすよね”って。

一同 ハハハハハハ!

Bose ええええっ! ってなって(笑)。

安部 アイツ、そういうこと平気で言うんですよ! ちょっとバカなんですよ! たぶんカッコつけたいんだと思うんですけどね。こないだも銀杏ボーイズさんとの対バン企画に出たときにMCで“銀杏ボーイズ聴いてたもんな”って話をしたら、まっちゃんが“いや、俺はやっぱゴーイング・ステディなんだよね”とか言ってて!

メイリン ハハハハ! ヤバっ!

Bose 言わなくていいじゃん!

安部 そうなんですよ! ちょっとバカなんですよ!

Bose でもさ、まっちゃんをあんま追い込まないほうがいい気がするねぇ。扱いを間違えるといなくなったりしそうじゃんね。

安部 そうなんですよ。まっちゃんとは前のバンドのころからいっしょなんですけど、当時追い込みすぎてタイに逃げちゃったことがあって……

一同 えええええ!

安部 追い込んじゃダメとは思いつつも、言わなきゃ治らないから。

Bose そうなると間接的にマネージャーとかに管理してもらうしかないよねぇ。いやぁ、でもまっちゃん最高だね、おもしろいわぁ。

夏フェス

−まっちゃんの話はまだ訊きたいところですが、そろそろ次のお題にいきましょう。次は……“夏フェス”です。これからの夏フェス・シーズン、みなさんすでに決まっているものもあると思いますが。

Bose 我々はフジ・ロックとかがあって。まぁ春先から野外フェスはけっこう出演してますね。

安部 ぼくらもフジ・ロック出て、ライジング・サンもあるし、楽しみなフェスがたくさんありますね。

メイリン わたしはワールド・ハピネスと長野のエイミング・ハイでスチャダラパーさんとごいっしょしますね。

−メイリンさんは夏フェスに出演するのは今年がはじめて?

メイリン そうです。夏フェスは遊びに行ったこともないんで、ほんとに初体験って感じで。

−夏の野外イベントにどんなイメージを持ってます?

メイリン 山を登って……

Bose 完全にフジロックのイメージだ。

メイリン あとは川を下る……?

安部 もはや夏フェスですらないよ。

メイリン あれ? でも、大きな音を野外で出せるのって、すごいことじゃないですか。普段、わたし、声が大きいって怒られることがあるので、その問題がないのがうれしい。

−スチャはもう夏フェスの大先輩だと思うんですが、醍醐味はどんなところでしょう?

Bose なんだろうねぇ。ぼくら、フジ・ロックやライジング・サンとか大きいフェスにも出るけど、もうすこし規模の小さい野外イベントにもけっこう出てるのね。そっちはそっちで大好物だったりする。イベントの仕切りがデタラメとかね。イベント当日、犬抱いたオーガナイザーが迎えに来たりして、“うわ、オイシイ!”みたいな。

—ハハハ! ほっこり系ですね。

Bose あとは主宰のひとがぼくらのライブを呼び込むときに感極まっちゃってたり。やりづらいっての!

一同 ハハハハハ!

Bose でも、そういうの大好きですね。そういう意味ではたまにギリギリでアウトなイベントとかもあるんだけど、なんか愛らしいというか。

−勇磨さんは印象的な夏フェスの思い出ありますか?

安部 ぼくは2年前に出させていただいたフジ・ロックですね。苗場食堂のステージだったんですけど、それがはじめての野外ライブで。すごい盛り上がったし、自分たちもめちゃめちゃ楽しくて。今年もいいライブできればなと思います。

セブンティーン

−では、次のカード。次は……“セブンティーン”です。要は17歳のころの話が聞ければなと。スチャの最新EPのタイトルにもなっていますが。

Bose 2017年にひっかけた適当なタイトルなんだけどね。収録されてる“セブンティーン・ブギ”もそこからの連想で。まぁ強引につじつま合わせると、2017年って2000年代にとっての17歳になるんじゃないかってことで書いた曲なんだけど。世界は混沌としてるけど、まだまだ17歳なんだからっていう。でもさ、ぼくらも50歳を目前にして、17歳のころの自分がやっとかわいいって思える歳になったなって思ってて。黒歴史も全部ひっくるめて許せるなって。

安部 自分の入った高校って女子高が共学になって間もないとこだったんで、男子生徒がすくなかったんですよ。入った学部が美術学部で、オシャレでかわいい子がたくさんいるようなところを想像してたんですけど、全然そんな感じじゃなくて。そういう女の子とかは一切いなかったですね。その鬱憤をハイロウズとか聴いて発散してたっすね。バンドやりたくてもクラスに男子が3人とかしかいなかったから、できなくって。

メイリン わたしは16歳のころに自分で勝手に退学届け出して高校辞めたんですよね。それで音楽やってこうって決めて。当時はパンクとか好きだったから、もう反骨精神の塊で。で、ひとりで音楽はじめてライブハウスとかでライブしたり、そういう友達ができたのが17歳くらい。勇磨とはじめて会ったのもそのころですね。

Bose なるほどねぇ。ぼくが17歳のときはまだ岡山で、雑誌の宝島とか、当時たまにテレビに出てたみうらじゅんさんにあこがれてるんだけど、なにせ距離が遠いし、クラスに同じようなものが好きな友達もいなかったから、すごいモヤモヤしてましたねぇ。

—三者三様にもがきの時期だったというか。

Bose みんなそうなんじゃない? この時期にイケてるヤツなんてロクなもんじゃないよね。

安部 ほんとそうですよね。でも、そういうヤツはいまはだいたいダメになってる。

—当時葛藤しといてよかったということですねぇ。

ファッション

−ではサクサク次にいきましょう。次は“ファッション”。メイリンさんはモデルなどもやられていますが、ファッションに関してはいかがですか?

メイリン わたしは映画とか観て、その主人公になりきっちゃうタイプなんですよね。服の趣味とかも、映画とかに影響されて全然変わっちゃうんです。昨日も1930年代の映画観て、そこに出てくるシャツにスラックス穿いてる登場人物がカッコよくて。今日の服装もその影響だったりします。

安部 ぼくはあんま変わんないんですよね。リーバイスの505の33インチが大好きだから、毎回おなじようなの買ってる。あとは犬のデザインのTシャツが好きで、なおかつヘビーウェイトのもの……いまも着てるんですけど、このオニータってブランドのボディがいちばん好き。

Bose 今日かぶってる帽子もいいじゃない。

安部 これは最近買ったんですけど。アメリカの土木作業員が夏になるとかぶるやつらしくて。ほかにあんまかぶってるひといないからいいかなって。でも、ボーズさんっていつもオシャレですよね、昔っから。

Bose ぼくらが若いころってネットもなかったし、いまみたいになんでも手に入る時代じゃなかったんだよね。たとえば、当時ビースティー・ボーイズが着てたチャンピオンのスウェットとかも同じものが手に入らないわけ。それをNIGO®︎くんとかが自分たちで作るようになったんだよね。で、そうやってぼくらの世代のひとたちが作った服をいまも着てるっていう。それ着とけば大丈夫っしょ、みたいな。エイプとかネイバーフッドとかダブル・タップスとか同じ世代の友達がやってるブランドって、とにかくこだわりが強いんだよね。こんなにこだわって服作ってるクリエイターって世界的に見てもめずらしいんじゃないかな。そういうひとたちだから、はじめは海外のファッションに影響受けてるんだけど、長く続けてるうちに、オリジナルを超えちゃってるんだよね。本物よりディテールが細かい、みたいな。

−ボーズさんの定番アイテムってなにかありますか?

Bose スイングトップとキャップとTシャツって感じかな。もう歳とったから、ファッションに対する冒険とか全くないんだよね。だから同じバリエーションの服ばっかクローゼットにある。ほんとオバQみたいな感じ。

−ハハハハ!

Bose でもさ、こないだD.A.N.のみんなに会ったらさ、着てる服が90年代にぼくらが着てた服といっしょなの。ブランドもいっしょだし、全体のフォルムも同じで。リバイバルってことなのかもしれないけど、さすがにビックリしたなぁ。

—メイリンさんの定番も教えてください。

メイリン サイジングがぴったりのものが好きですね。今日はちょっとサイズ合ってないけど……。本当はサイズもぴったりで質のいいものを揃えたいんですけど、やっぱお金かかるなぁって。でもお仕事でいろんな洋服を着れるのはうれしいですねぇ。

スチャダラパーとEGO-WRAPPIN' "ミクロボーイとマクロガール"(Official Music Video)

作詞

−では次。次は……“作詞”。ここにいる3人はみなさん作詞されるわけですが、まず各々の作詞法を伺いたくて

安部 作詞は自分ひとりでやってるんですけど、だいたい歌いながら、歌詞も適当にあててって、引っ掛かったフレーズをもとに書いていくパターンとか、書きためてたフレーズを曲にしていくっていうパターンがありますね。

−歌詞の着想は普段の生活のなかから?

安部 わりとそういう感じですね。生活のなかで浮かんだフレーズとかを書きためて。とはいえ、ぼくらアルバムを1年に1枚づつ出してるんですけど、そういう感じで作詞するのに飽き飽きしてきたっていうか。日常のなかから浮かんだ言葉を歌詞にするから“日常系バンド”って呼ばれたりするけど、そういうのはもういいかなって。まぁ、それを求められてる気もするんだけど、個人的にはやり方を変えていきたいんですよね。

−具体的には?

安部 もうちょっと内面のことを書いてもいいかなって。そもそもは内省的な歌詞が聴けなくなって、あえて情景ばかり書いてたんですよ。感情的な部分ってエネルギーが強いから聴き疲れしちゃうっていうか。だからフラットに聴いてもらえる歌詞のほうがいいかなと思って現在のスタイルになったんですけど。あ、『はじめの一歩』ってマンガ読んだことあります?

Bose ハハハ! 急だな!

安部 『はじめの一歩』に出てくる主人公の一歩って、センスはないけど腕力がすごいんですよ。で、素直ながんばり屋。それに対してライバルの宮田はパンチ一発の重みはないけど技術派。ぼくらはどっちかっていうと一歩みたいなプレイ・スタイルに憧れてるんですよね。でも、一歩みたくなるためには、もっとパンチの威力を上げなくちゃいけないなって思ってて。たぶん宮田みたいなバンドはいくらでもいるんだけど、ぼくらの世代でカルチャーを押し広げるには、もうすこしフィジカルを鍛えなきゃなと。特にライブ。そういう意味で、もっと心情だったり内面みたいな部分を歌えたら、聴いてるひとをもっと引き寄せられるかなと思ってるんです。

−ベテランのバンドでも長続きの秘訣はフィジカルだって言うひとは多いですよね。

Bose 重要でしょうねぇ。ぼくらとかは“フィジカル重要だよねぇ”って言いながら、結局なにもしないタイプなんだけどね。

メイリン フフフ。でも長く続けてらっしゃるじゃないですか。

Bose それは長年培ってきた技術ですよ。ライブでも動いてる風に見えて、あんまり動いてない。活動もしてる風に見えて、けっこう休んでるっていう。

一同 ハハハハハ!

—メイリンさんの作詞メソッドは?

メイリン わたし、独り言とか急に歌を口ずさんだりが多いんですよ。キッチンでラザニア作ってたとするじゃないですか。そういうときでも“ラザニア〜、ひき肉入れて〜”みたいに歌っちゃってて……

Bose あぁ、病気なんだね。

一同 ハハハハハハハハ!

メイリン そうなんですよぉ。でも、そういう口ずさんだ歌がヒントになって曲ができたりもしてて。あとはトラックができたら、それを流しながらずっと独り言を言って作ってみたり。もちろん、ちゃんとテーマを決めてしっかり書く場合もありますね。そういうときはノートにいろいろ書き出したりして。

Bose あ、ノートに書き出す派なんだ。勇磨くんは?

安部 自分は思いついたときにパッとメモしたいのでケータイですね。

Bose ぼくもそう。昔はもちろんノートに書いてたんだけど、子供ができたタイミングくらいからケータイで書くようになって。いまはすっかりそっちのほうで体が慣れちゃったなぁ。

メイリン ケータイで文字打つの苦手なんですよね。フリック入力とか全然できなくて。だから紙に書いちゃったほうが早いんですよね、わたしの場合。

−ボーズさんは長いあいだリリック書かれてきて、自分のなかにひとつ型みたいなものができたりはしませんか?

Bose あぁ、あるかなぁ。でも、いまだに全然書けないこととかあるし、そこらへんは変わってないかも。昔はもっとキャリアを積めばどんどん歌詞が出てくるのかなとおもったけど、そんなことはなかったね。ただ、無駄な寄り道みたいなのは減ってきたかもしれない。煮詰まったりする機会も減ってきたんじゃないかな。

最近買ったもの

−そろそろお時間もいい感じなので締めの方向に向かっていきたいんですが、残りふたつくらいカード引いて話す感じにしましょう。では次が……“最近買ったもの”。軽めの話ですね。ボーズさんは?

Bose 最近は子供もいるからキャンプとかやりはじめたんだよね。で、キャンプで使うタープを買った。ポール立てて屋根になるやつ。

−ハハハ。ほんとに最近買った感のあるやつですね。

Bose けっこう高級なやつ買ったんだよね。ポールとか全部込みで40000円くらいするやつ。勇磨くんは?

安部 ぼくはいまかぶってる帽子ですかね。9800円くらいしました。

メイリン わたしは牛乳パックの形をした布製のかぶり物ですね。渋谷にある古着屋さんで6000円くらいでした。



2020

−では最後のカードを引きましょうか。はい、“2020”。2020年への展望って感じですかね。スチャの新曲にも“サマージャム2020”がありますが。

Bose もう早めにやんないとダサいじゃん。2020年になって“サマージャム2020”作るのがいちばんダサいからさ。今出しておけば2020年になって“あぁ、まだ2020年の話、してるんだ?”って顔ができるでしょ。

メイリン ハハハハ。なるほど。

−でも、もう3年後ですからアッという間ですよね。

安部 ぼく、前に占いタレントのゲッターズ飯田さんに手相を見てもらって。そのときに“2020年に劇的に人生が変わります”って言われたんですよ。“とんでもなく楽しくなる”って言われたから、その言葉を信じて生きていこうかなって思います。

Bose マジか! やばいね! オリンピックの開会式とかで演奏するんじゃない?

メイリン うらやましい!

安部 そのとき、ちょうど30歳なので、それまでがんばらなきゃなと。健康で楽しくやっていきたいなぁ。

メイリン わたしは26歳になるのかぁ。

Bose まだまだ若いね。芸能の世界では26〜27歳くらいでやってた分野が一生続くってよく言うもんね。

メイリン そうなんですね! どうなるかなぁ。でも3年経ったらもうだれも見向きもしてくれなくなったりするかもですもんね……。

Bose そんなことないでしょ!

メイリン いやいや、そうならないために心のマッスルを鍛えなきゃいけないなぁ。

−カードを引いてのテーマトークは以上です。ありがとうございました! 今回の対バン企画、何卒よろしくお願いします

Bose すごい楽しみですよ。世代は違うけど、空気感は近い気がするんでね。なんかみんなでいっしょにセッションとかできたらいいよねぇ。まっちゃんさえよければ。

一同 ハハハハハハハハハ!

メイリン 結局、最後までまっちゃんの話!

安部 ほんとあいつクソ野郎なんですよ! すいません! がんばりますんで、よろしくお願いします!






Erection
-10th Anniversary-


スチャダラパー
x
never young beach
x
ZOMBIE-CHANG

2017.06.22(THU) at UNIT

LINE UP:
スチャダラパー
never young beach
ZOMBIE-CHANG

INFORMATION:
OPEN : 18:30
START : 19:30
CHARGE :
THANKS SOLD OUT