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INTERVIEW




波の間をたゆたうようなリラックスした音楽をまとめたやけのはらの2枚の最新ミックスCD『FLOAT ON THE WAVES VOL.1 & 2』、やけのはらもメンバーとして所属するyounGSoundsの初期騒動全開のデビュー盤『more than TV』。そしてロードムービーを彷彿とさせるチリンかつコンセプチュアルなVIDEOTAPEMUSICによる『7泊8日』。うだるような今夏の暑さをこの4枚のローテーションをBGMに切り抜けた諸氏は少なくないはず。そんな徳の高いリスナーにオススメしたい、2012年の夏季総決算パーティーが9月23日、10月9日に執り行われる。前者はVIDEOTAPEMUSIC『7泊8日』、やけのはら『FLOAT ON THE WAVES VOL.1 & 2』発売記念となるサンデー・アフタヌーン・パーティー、後者はyounGSounds『more than TV』リリース・パーティー。今回はその両イベントを記念して、やけのはらとVIDEOTAPEMUSICによる対談を敢行。今年の夏を彩った4作はどのようにして生まれたのか。あの名曲の誕生秘話から、“ノスタルジー”に対する両者の考察など、話題は多岐に渡った。



Q. 2人のファースト・コンタクトはいつごろだったんでしょうか?

やけのはら(以下、やけ)「はじめてビデオくんのことを知ったのは『SUMMER OF DEATH』の頃かなぁ。某レコード店の『SUMMER OF~』のキャプションに“やけのはら好きにオススメ!”って書いてあったから、試聴して買ったんです。それをツイッターでつぶやいたらビデオくんが反応してくれて、っていう流れじゃないかな」

VIDEOTAPEMUSIC(以下、VIDEO)「そうですね。ぼく、そのコメントした次の日にタワレコのやけさんのインストア・ライブを観に行ってるんですよ。でも、怖くて話しかけられなかったんです」

Q. ハハハ! 遠くから様子を伺っていた感じですね。

VIDEO「そうそう。で、ちゃんと挨拶させてもらったのが2010年の渋谷O-nestかな。(((さらうんど)))が初ライブをしたときですね」

やけ「実は初対面のときのこと、そんなに覚えてないんだよね。まぁ、作品とかツイッターとかでだいたいの人となりはわかるしね。作品の映像も含めて想像するに、熊みたいな男ではないだろうなと思ってたし」

VIDEO「ハハハ。その後も何ヶ月おきかでイベントとかで会ったりしましたね。いろいろ深い話をしはじめたのは去年の夏くらいですか? OPPA-LAでイベントをやるからDJをお願いして、そのイベントまでにいっしょに曲を作りたいですねって話になって」

やけ「そうだそうだ! だけど、そのイベントは先に別の場所でイベントが入ってたから出れなくて。それでも曲は作ろうってことになってインストはもらってたんだった」

VIDEO「イベントまでに間に合わせて、やけさんは出演できないけどラップ部分だけ映像を撮ってライブでやろうってことだったんですよ。結局、曲自体が完成したのは冬くらいだったから陽の目を浴びることなく……」

やけ「でも、あの曲は自分のアルバムに入れる予定です。で、話を進めると、そのあたりからいっしょにご飯を食べに行ったり交流が深まってくるわけです。そのなかでビデオくんが“『SUMMER OF DEATH』の次の作品を作りたい”って話をしてて。今年の1月くらいにはだいぶ形になった状態のものを聴かせてもらってたんだよね。で“ぜひ参加させてよ”って話もしていたから、すでにある曲の別バージョンを作ろうってことになった。そういった紆余曲折があって“Blow in the Wind”ができたと」

【VIDEOTAPEMUSIC+やけのはら+高城晶平(cero)+MC.sirafu「Blow in the wind」】


VIDEO「アルバムではやけさんとの楽曲は発売時期の兼ね合いで間に合わないだろうなぁと思ってたんですよ。だから8曲入りで『7泊8日』ってタイトルにしてて。それが間に合っちゃったんで“Blow in the Wind”をボーナス・トラック扱いにさせてもらったんです。嬉しい誤算でしたけどね」

やけ「そうか、あの曲のせいで延泊しちゃったんだね」

Q. ハハハ、そういうことだったんですねぇ。『7泊8日』というタイトル、非常に素晴らしい題名ですよね。



【VIDEOTAPEMUSIC「7泊8日」(Trailer) 】


やけ「というかVIDEOTAPEMUSICプロジェクトとして、これ以上ないタイトルだよね」

VIDEO「そうですね。リゾート感とB級映画感を表現するうえでピッタリなワードじゃないかと」

やけ「去年末くらいはCD-Rで自主でリリースするって言ってたから、せっかくならしっかりした流通を通したほうがいいと思ったので、ビデオくんに流通のひとを紹介したりして。デモを聴いた時点ですごくよかったから、これをCD-Rでひっそりとリリースするのはもったいないなぁと思って」

Q. できあがった作品を聴いてみて、やけさんはどんな感想を持ちました?

やけ「ジャケットしかり、映像しかり、音楽しかり、トータルで見てブレてないというか。全体の雰囲気作りがうまいですよね、とにかく」

Q. ちなみにビデオさんのアルバムって全体を通しての具体的なストーリーは設定している?

VIDEO「一応ありますね。基本的な登場人物は若い男女2人ですね。この2人がお金を持ち逃げしての逃避行から物語がはじまるっていう。前半は山や海へ行って、中盤の“Death Farm”という曲でバイオレンスがあるんですけど……」

やけ「ハハハ! B級映画感あるなぁ!」

VIDEO「“Slumber Party Girl’s Diary”では女がお金を全部持って逃げちゃうんですよ。失意の男はそのままホテルに入っていって、その後、ホテルで出会った女の子たちと交流を深めていくと。“Hot Pants In The Summercamp”ではセックス描写もありますね。細かく曲中のこの部分でセックスしてるっていうのも決めてあるんですけど、それは聴いて判断してみてください」

やけ「すごいなぁ……」

VIDEO「で、そこから男はまたひとりで旅をスタート、やけさんの“Blow in the Wind”の歌詞に着地する……っていうのが大まかなあらすじですね」

Q. おぉ……これ、本人の解説を噛みしめながら再度聴いてみたいですねぇ。“Blow in the Wind”の制作はどんな感じで進んでいったんでしょう?

やけ「この曲の歌詞は風をテーマにしたんですよ。この曲のネタは昔の映画のスタンダード曲なんだけど、日本の某グループの“風”って曲もバージョンが違う同じ曲をサンプリングしてるってことに気付いて。そこから風をテーマに決めて。あ、思い出した! この曲は全体を通してカルチャーに関することを書いてるんだけど、書く前後に川勝正幸(『ポップ中毒者の手記』などの著書で知られるライター/編集者。今年1月に死去)さんの訃報があったんだよね。それで“文化を愛する人間が生きていくとは”的なことをよく考えていた時期で、そのことが歌詞に反映されているかもですね」


Q. なるほど。ビデオさんはやけさんが今回リリースするミックスCDにはどんな感想を持ちましたか?

ビデオ「ピンポイントで好きな曲がけっこう入ってるんですよね。フルートの曲とか。このミックスって録音自体はかなり前だったんですよね?」

やけ「そうそう。両方ともUSTREAMで配信したもので、1枚目が2年前の夏、2枚目が去年の夏の終わりのです。生のDJミックスだから、同じアーティストが3曲くらい収録されてたり、1枚目と2枚目で同じ曲が入ってたりもするんですよね。でも普段のクラブでのDJとは全然違う時間の流れ方があって新鮮だったんですよ。ミックスもそんなにしてないというのも含めて」

Q. あえてビデオさんのアルバムとやけさんの今回のミックスに共通点を見出すならどんな部分だと思いますか? 個人的にはすごく箱庭感というか、架空の夏感みたいなものを両作品から感じたんですが。

やけ「あぁ、それはノスタルジーって言い換えできるかもしれないなぁ」

VIDEO「たしかにそれは重要なキーワードですよね」

やけ「自分の好きなラインでドリーミーな音楽というのがあって。今回のミックスCDは国籍とか年代、ジャンルをまたいで、自分のなかのドリーミー・ミュージックをまとめた形になってます。60年代のアメリカン・ポップスからシティー・ソウル、ロックステディ、曲によっては80年代のネオアコ系作品とかね。でも、そういった曲の描いているものは結局は自分のリアルタイムな原体験ではないから、妄想が入り込む余地がすごくあるんですよ。ベタかもしれないけど、映画『アメリカン・グラフィティ』的な情景しかり、ビーチ・ボーイズの音楽しかり。ビーチ・ボーイズの有名な話で、本人たちはまったくサーフィンをしないっていう逸話は典型的な例だけど、作られた架空の情景にまつわる音楽というのが自分の興味のある音楽のラインとしてひとつあるんですよねぇ。それでいて、グッドタイムを感じさせる音楽、エネルギーが好きというのもあるし。それは2人に共通している部分があるのかもしれないね」

VIDEO「映像で言うなら40~50年代のミュージカル映画の雰囲気はすごくロマンチックだと思いますね。箱庭感をすごく感じる」

やけ「あぁ、なるほどね。白黒フィルムの時代に昼に夜の場面を撮影したり、夏に冬の場面を撮影したり、アナログ・メディアのほうがごまかしが効くぶん、フィクショナルな成分が強いよね。それは音楽でもそうでしょ。だから余計に夢がふくらむというか。粒子が粗いほうが勝手な解釈をできるし、妄想の余剰があるんだよね」

Q. ノスタルジーが及ぶ範囲っ てどのくらいまで昔なら有効なんでしょうね? 白黒フィルムやアナログ盤に思いを馳せても、結局は追体験なわけじゃないですか。

やけ「うーん、どうだろうね。でも、やっぱり文化的な共通項がある程度ないと無理でしょう。1000年前の情景に感情移入はしづらいもん。ギリギリで江戸時代くらいならイメージが掴めるけど、石器時代の人間を見て“狩猟してんなぁ! 懐かしい!泣ける!”とはならないじゃん。そこらへんはもうすこし深く掘り下げて研究したいんだよね、ノスタルジーおじさんとしては」

Q. ノスタルジーおじさん! ハハハ! ノスタルジー・ポイントの外郭に関してはまだまだ研究に余念がないと。

やけ「そうだね。でもノスタルジーに関して補足しておきたいのは、いわゆる『3丁目の夕日』的な、“昔はよかった”っていう懐古主義ともすこし違うんだよなぁ。エキゾシズムとしてのノスタルジーっていうか」

VIDEO「それはわかります。かつてあったまったく別の世界や文化への憧憬というか」

やけ「そうそう。そういった文化への違和感にこそ興味があるんだよね」

Q. なるほど。さて、ノスタルジー/エキゾ研究発表の場は今後に取っておくとして、リリース・パーティー直前のyounGSoundsのことも伺っておきたいなと。どうですか? やっぱりソロとバンドでのチャンネルの違いはありますか?

やけ「まぁ、バンドは自分が中心というわけじゃないし、ソロとは全然違いますよね。自分のなにかをこれで表現しようとかもないし。最終的には関わっている以上、なんらかのエッセンスは入るけど。あと、精神的には楽ですよ。ライブでも間違ってもなんとかなるって部分はある」

Q. ハハハ。

やけ「みんな、人間的にちゃんとしてるっていうのも大きいですねぇ」



【younGSounds『more than TV』 Trailer】

Q. 『more than TV』のコンセプトは?

やけ「ないですよ。これまでのライブで演奏した持ち曲を全部詰め込んだっていうくらい。だからデビュー盤だけどベスト盤。younGSoundsにとっての『~ SUPER BEST』とか『~ ULTIMATE COLLECTION』みたいな感じですね」

Q. 活動初期に比べて、どんな部分に成長が見られたと感じますか?

やけ「成長かぁ……。基本的に円熟とかしていくバンドではない気もするし。逆にそっちに向かっていくことはつまんないように思うんで。自分の歌詞もスタジオで2分とかで書いてるから。反射神経メインのバンドかもしれないですね」

【younGSounds 「ヤングサウンズのDISCO」 MV】

Q. 10月9日には代官山UNITでリリース・パーティーを控えてますが、バンドを代表して意気込みをお願いします。

やけ「楽しい感じにしたいですね。ほかの出演者も曽我部さんとか田我流氏とか豪華ですし。ぜひ遊びに来てもらいたいです。あとビデオくんのアルバムと自分のミックスCDの発売記念のパーティーも9月23日、代官山SALOONであるので、こちらもぜひ!」

VIDEO「SALOONでのライブではゲストも参加する予定だし、物販では過去作も購入できるようにしますので、そちらも気にかけていただければ」

やけ「23日はコンピューマさん、TUCKERさんも出演するからね。TUCKERさんは今回はラウンジ・セットでお願いしていて。それもかなり楽しみです。『7泊8日』、『FLOAT ON THE WAVES』両作の世界観が楽しめるパーティーになるんじゃないかなと思うので、ぜひともご来場ください」





2012.09.23 SUN

Erection presents
VIDEOTAPEMUSIC 『7泊8日』
&
やけのはら NEW MIX CD Release Party

LINE UP:

LIVE :
VIDEOTAPEMUSIC
TUCKER

DJ :
やけのはら
コンピューマ
shakke


イベント詳細はコチラ>>


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2012.10.09 TUE

Erection presents
younGSounds『more than TV』Release Party

LINE UP:

LIVE :
younGSounds
曽我部恵一BAND
田我流

DJ :
JxJx (YOUR SONG IS GOOD)
ロベルト吉野 (サイプレス上野とロベルト吉野)


イベント詳細はコチラ>>


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やけのはら
DJ、ラッパー、トラックメイカー。『FUJI ROCK FESTIVAL』、『METAMORPHOSE』、『KAIKOO』、『RAW LIFE』、『SENSE OF WONDER』、『ボロフェスタ』などの数々のイベントや、日本中の多数のパーティーに出演。年間100本以上の多種多様なパーティで フロアを沸かせ、多数のミックスCDを発表している。またラッパーとしては、アルファベッツのメンバーとして2003年にアルバム「なれのはてな」を発表したのをはじめ、 曽我部恵一主宰レーベルROSE RECORDSのコンピレーションにも個人名義のラップ曲を 提供。マンガ「ピューと吹く!ジャガー」ドラマCDの音楽制作、テレビ番組の楽曲制作、 イルリメ、環ROY、Aira Mitsuki、サイプレス上野とロベルト吉野などのリミックス、 多数のダンスミュージック・コンピへの曲提供など、トラックメイカーとしての活動 も活発に行なっている。ハードコアパンクとディスコを合体させたバン ドyounGSoundsではサンプラー&ボーカル担当。2009年に七尾旅人×やけのはら名義でリ リースした「Rollin' Rollin'」が話題になり、2010年には初のラップアルバム 「THIS NIGHT IS STILL YOUNG」をリリース。近作はStones Throw15周年記念のオフィシャルミックス「Stones Throw 15 mixed by やけのはら」。

http://yakenohara.blog73.fc2.com/



VIDEOTAPEMUSIC
地方都市のリサイクルショップや閉店したレンタルビデオショップなどで収集したVHS、実家の片隅に忘れられたホームビデオなど、古今東西さまざまなビデオテープをサンプリングして映像と音楽を同時に制作している。 VHSの映像とピアニカを使ってライブをするほか、他アーティストとの映像を使ったコラボレーション、MV制作、デザイン、ビデオインスタレーションなど、その活動のフィールドはとても幅広い。

http://videotapemusic.tumblr.com/