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INTERVIEW




SIMI LAB INTERVIEW

今年3月に2ndアルバム『Page 2: MIND OVER MATTER』をリリースしたSIMI LAB。前作から2年4ヶ月。その間にQNの脱退や新メンバーの加入などの紆余曲折を経て完成した本作は、粗々しいビートと個性溢れるメンバーのスピットが十二分に堪能できる傑作である。そんな傑作を引っさげ、4月29日には代官山UNITで初となるワンマンライブを開催することも決まっている。本インタビューはまさにワンマンを目前に控えた4月中旬に行われた。議題はずばり“ライブ”。メンバー各人に影響を与えたライブ映像を持ち寄ってもらい、SIMI LABの考える舞台論を展開してもらった。本稿がアップされるのはおそらくUNITでのライブ本番直前。このインタビューをサブテキストに、ライブ当日を震えて待て!

Text:高橋圭太
Photo:寺沢美遊



アルバムの特典DVD(『THE REPORT OF SHERPA』)には2年前の『りんご音楽祭』でのライブ以降の映像が収められてますが、そこからおおよそ何本くらいライブしてるか覚えてます?

OMSB「去年だけで80本くらいしてるはずだから、100本以上はしてるんじゃないですかね」

そのなかで個人的にベストなライブを挙げるなら?

OMSB「新木場STUDIO COASTでやったDCPRGとのライブですかね。生バンドの上でラップすることの気持ちよさも感じたし、単純にそのときの自分の全部を出せたっすね。お客さんもたくさんいたし。DCPRGをバックに“Uncommon”のリミックスをやったときは、普段のライブのスイッチのもう一段階上のスイッチが入った気がして」

USOWA「俺は2年前の『KAIKOO』(POPWAVE FESTIVAL)です。お客さんの期待もすごい感じたから、こっちも“ウオー!”って感じになったし」

DJ Hi'Spec「俺も『KAIKOO』かな。あのときはオリジナルのビートを差し替えたり、それまでしてこなかった工夫もできたから、新鮮な気持ちでできたと思います」

DJ ZAI「あとは町田FLAVAでやってる『GRINGO』っていう自分たち主宰のパーティーですよね。あそこは完全に自分たちのホームだし、毎回リラックスしてやれてる気がするっす」

DyyPRIDE「渋谷VISIONでやったCut Chemistの来日イベントでのライブは個人的によかったかな。それまでライブはいろいろ勘繰っちゃうっていうか、なんかいろいろ気にしすぎたりしたんですけど、あのときは気にせず自分らしいライブができたっすね」

ちなみにメンバー内でライブ功者をひとり挙げるならだれでしょう。

OMSB「RIKKIじゃないですかね。あいつが入ってからSIMI LABのライブは変わった気がするなぁ。とにかくシャウトがうるさいっていう」

フフフフ……。

OMSB「ライブ終わった後もずっと元気だからね。まぁ、いい意味で言えばムードメイカーみたいな」

USOWA「あとは誰だろうなぁ……。俺じゃないっすかね?」

ハハハ! 自分で言っちゃうっていう。

USOWA「バランス取るって意味では。みんな、序盤から飛ばしすぎて声枯れちゃうみたいなのあるから、俺はそこで全体を見てバランス取りながら塩、コショウを振る係」

ライブの構成に関しては近年で変化はありました?

DJ Hi'Spec「ここ1年くらいは自分が全体のおおまかな構成を考えてるんですけど、それ自体が大きな変化で。それまでは曲順くらいしか決めごとがなかったから」

DyyPRIDE「構成の相談しても、昔はもっと抽象的だったもんね。“まぁ、雰囲気で”みたいな感じだったから」

ステージングについてはいかがでしょう。

OMSB「ぼーっと突っ立ってるのはやめようと思ってますね、常々。立ったままビートに乗ってるのと、動きながらビートに乗るんじゃ臨場感が全然違うし。こっちが楽しそうにしないとお客さんは楽しくならないっすよね。前にYOU THE ROCKさんがなにかで、ライブ中に“調子どう?”って呼びかけるじゃないですか。それ、低いテンションで言われても“こっちが調子どうなのって訊きたいわ”ってなっちゃうよ、って言ってて。それは本当そう思いますね」

USOWA「俺はメンバーとアイコンタクト取ろうって最近意識してます」

DyyPRIDE「あ、まじ? 気づかなかったわ」

OMSB「ハハハ、できてないじゃん」

DJ Hi'Spec「俺はけっこうUSOWAからアイコンタクトされますよ。あれ、地味にうれしいんだよね」

USOWA「あとで見てもらう動画にもあるんだけど、客席を見ずにメンバーと向かいあってラップしたりとか、ほかのメンバーがラップしてるところにリアクションいれたりとか、いいなぁと思って」

たしかにメンバー間の関係が見て取れるアクションだったりは観客側もグッときたりしますからね。DyyPRIDE君はどうですか?

DyyPRIDE「俺も昔に比べたら動くようになったっすね。とはいえ、やたら動き回るキャラって感じでもないんですけど。それでも、さっきOMSBが言ったみたいにぼーっと突っ立ってるようなことは減ったんじゃないかな」

なるほど。さて、今日はみなさんに好きなライブ動画を選んできてもらったので、ここらへんでみんなで映像を見ながら話をしようかなと思います。まずUSOWA君。

USOWA「俺はBusta Rhymesですね。これはBustaよりいっしょに出てるSpliff Starを見てもらいたい」


Busta Rhymes Everything Remains Raw

USOWA「(動画の04:50あたり)フフフ……このやりとりとかだいぶいいっすよね」

OMSB「めっちゃ舎弟感あるなぁ」

USOWA「掛け合いの部分もすごい自然だし、ヤバいっすよね。あとSpliffがちょこちょこ隣を気にするんですよ。“どうっすか?”みたいな感じで。それも味があっていい。これ、ライブがフル尺で上がってて、全部見ると1時間くらいかかっちゃうんですけどね」

こういったUSのラッパーのライブ映像を見て影響を受けたりもしますか?

DyyPRIDE「(ボソッと)俺、ライブ動画とかあんま好きじゃないかもしんない」

USOWA「ハハハハハ!」

今日の企画を根底から揺るがす発言が飛び出しましたね!

DyyPRIDE「いや、ライブ動画よりもPVのほうが好きなんじゃないかっていう。どんなステージングすればいいか勉強のために見たりするんですけど、もともと興味ないのかもしれないっすね。そのかわりPVに影響されてCD買ったりはするんですよ。でも映像の印象が強すぎてCDで聴くとそうでもない、みたいなこともたくさんあるし、そういう意味では俺にとってPVはけっこうデカいかもしれない」

そんなDyyPRIDE君はどんな映像を選んだんでしょう。

DyyPRIDE「そもそもヒップホップじゃないんですけどね、選んだのは。どっちかというとぼーっと突っ立ってる系。でも立ってるだけでもすごいひとっているじゃないですか。それがカッコいいと思うんですよね。選んだのはそういう系のひとっすね」


Eek A Mouth

DyyPRIDE「Eek A Mouseってレゲエのひとなんですけど」

USOWA「ジャマイカ特有の関係ないひともステージの後ろにいるやつだね」

ハハハ、めっちゃいますね。それにしても貫禄あるなぁ。

DyyPRIDE「そうなんですよ。これだけ大勢のお客さんを前にしても派手なアクションしないっていう。いちばんすご いのがここらへんなんですよ(動画の02:22あたり)」

ハハハハハハハハ! 仁王立ち!

OMSB「どんな気持ちなんだろう、この瞬間……」

DyyPRIDE「ラップやってるひとより、楽器弾いてるひとがステージでなにを考えてるのか気になるっすね、自分は。あともうひとつ選んだんですけどいいですか?」


The Cramps Tear It Up

こちらはバンドものです。

DyyPRIDE「完全に変態系ですね。隣でギター弾いてるのはヴォーカルの奥さんで、常にクールなんですよ。これはかっこいいなぁ。(動画の01:09あたり)マイク、咥えちゃってますねぇ」

OMSB「だいぶ咥えてんなぁ」

銀杏BOYZのライブを彷彿とさせますね。とはいえ、これに影響受けてSIMI LABのライブに還元するのはむずかしいような……。

DyyPRIDE「ハハハ、さすがにマイク咥えられませんからねぇ。まぁ、パッション的な部分では見習いたいっすけどね」

非常にDyyPRIDE君っぽいチョイスだと思います。では次はOMSB君です。

OMSB「俺はこれっすね」


Live: KRS One @ Splash!

DJ Hi'Spec「お、KRS-ONE先生」

OMSB「この動画の見どころはフェイシングですね。やっぱフェイシング重要だなって。あとKRSって毎回ライブは厚着してんの。ライブが盛り上がるにつれて脱いでいって、ライブの臨場感を感じさせるっていう演出だと思うんだけど」

おお、厚着が臨場感を増幅させる説、興味深いですね。

OMSB「俺も厚着してステージ上がりますもん」

USOWA「たしかに! そういう意図があったんだ!」

OMSB「(動画の01:51あたり)ここでマフラーを取ります」

そもそもバックDJは半袖なのに、なんでマフラーしてるんだっていうね。

OMSB「(動画の03:23あたり)ここからコール&レスポンスなんですけど、最高なんですよ。もうね、ヒップホップは顔、フェイシングだなっていう。(動画の03:41あたりで)ここ、ここ! すげーいい顔!」

ハハハハハハ! これぞヒップホップですねぇ。

OMSB「ここ、もう1回見ていいですか? やべーよなぁ。ハハハハハハ!」

DyyPRIDE「顔もいいし、声量もすごいよね。ラッパーとしてのライブのお手本みたいな感じ」

まさにKRS-ONE先生ですね。素晴らしい。

DJ Hi'Spec「俺、すごい好きな映像あったんだけど、検索しても出てこなかったんですよね。前にOMSBに見せてもらったMadlibのライブ映像なんだけど。なので、かわりにこっちの映像を」


Chrome Chilldren MF Doom & Madlib Live

USOWA「あぁ、でもこれもカッコいいよね。俺もこれベストかも」

DJ Hi'Spec「全編ヤバすぎるよ。この9分間にStones Throwの素晴らしさが詰まってるっていう。(動画の03:55あたり)ここからMadlib出てくるんだけど、これもやっぱりカッコいいなぁ。そのOMSBに見せてもらったやつはもっと動いてたんだけど、覚えてない?」

OMSB「全然覚えてない」

DJ Hi'Spec「そうかぁ……。」

USOWA「(動画の06:07あたりで)おっ、名曲きましたね。こういうアンセム持ってるのはいいよなぁ」

さて、最後はZAI君です。

DJ ZAI「自分はこれですね。1998年のDMCでDJ CRAZEが優勝したときのルーティンっす」


DJ Craze - DMC 1998 US Finals Routine

DyyPRIDE「これ、酒1杯でも飲んだら崩れちゃいそうだよね」

OMSB「体が覚えてるんじゃない?」

DJ ZAI「これはリアルタイムで見たわけじゃないんですよね。リアルタイムでDMC見たのは2001年かな。dj KENTAROが世界制覇したときっすね」

OMSB「スクラッチつながりで俺も見たい動画思い出したんだけどいい? Roc Raidaなんだけど」


Roc Raida @ Vestax World 99

OMSB「スクラッチのあいだに指をペロッってなめるのがカッコいいんだよなぁ。あと微妙にずれたりもするんだけど、グルーヴはあるんですよ。これはかっこいい」

ターンテーブリストの動画は見てて全然飽きませんねぇ。では、ここらへんでライブの話に戻ろうかなと思うんですが、SIMI LABにとってライブの理想形ってどんなものですか?

OMSB「憧れるのは、観てるお客さんがセックスはじめたり、殴り合いのケンカになったり、ライブが作用して観てるひとがおかしくなっちゃう、みたいなのは理想ですね。そういう、人間の変なスイッチを押せるようなライブをしたいっす」

DJ ZAI「ライブはじまった瞬間に目を引いて、首振るしかない、みたいな」

USOWA「あとはライブ終わったあとに自分たちが放心しちゃうようなライブをしたいかな。反省とかする体力すら残らないくらいな」

OMSB「たとえば映画を観た後とか、影響受けちゃったりするじゃないですか。そんな感じで、ライブを観たひとの人生にちょっとでも変化があったりしたらいいかなと思います」

それらを踏まえて、今回の代官山UNITでのワンマンライブの意気込みを訊かせていただければ。

DJ Hi'Spec「ここ最近ずっとワンマンのことを考えてて、ふと思ったんですけど、ずっとお客さん目線のイメージをしてたっていうか。自分がお客さんだったら、みたいな目線だったなと。もちろんそれも大事なんだけど、まずは自分たちが楽しまないと意味がないって思ったんですよね、単純に。だからワンマンのときはまず自分たちが100%楽しむことが目標かな」

DJ ZAI「ライブ前には自分はDJもするんで、それも含めて楽しんでもらいたいですね。で、ライブではこれからにつながるようなライブができればなと。今回遊びに来たお客さんがこれからもSIMI LABについていこうって思えるようなライブにしたいです」

DyyPRIDE「ワンマンですからね。ほかの出演者といっしょに出るイベントより、濃度が高いSIMI LABを見せたいっすね」

OMSB「まぁ、自分たちは後悔ないよう、お客さんは完全にロックさせようと思いますね」


SIMI LAB "Avengers"



SUMMIT Presents.
"SIMI LAB ワンマンLIVE"

2014.04.29 TUE

LINE UP:
LIVE:
SIMI LAB

LIVE PAINT:
MA1LL

INFORMATION:
OPEN : 17:00 START : 18:00
CHARGE :
ADV 2,800yen/DOOR 3,500yen(共にDrink代別)
※前売り特典:
「Page 2 : Mind Over Matter」CDジャケット・チェンジング・ステッカー

詳細はコチラ

SIMI LAB
2009年に神奈川にて結成。初レコーディング曲「Walk Man」のPVをYoutubeに発表し、その存在が広く認知される。 2011年にグループとしての1st アルバム 「Page 1 : ANATOMY OF INSANE」をリリース。 その後もOMSB 「Mr. "All Bad" Jordan」、DyyPRIDE「In The Dyyp Shadow」そして「Ride So Dyyp」、MARIA「Detox」など、活発なソロ作品のリリースでHIPHOPを中心にロックやジャズシーン等、多方面から大きな反響を得た。 DJ ZAI, RIKKIの新メンバーも加入し、現在はOMSB、MARIA、DyyPRIDE、JUMA、USOWA、RIKKI、Hi'Spec(DJ)、DJ ZAI (DJ)という、6MC+2DJの編成で活動中。 またグループ内外でもデザイナーやイラストレーターとして活躍するMA1LLも所属しており、SIMI LABの活動は音楽だけにとどまらない。 2014年3月、グループとしての2nd Album「Page 2 : Mind Over Matter」をリリースした。 2014年4月29日、代官山UNITにて初のワンマンLIVEを控えている。